アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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横河 健 - 建築とテリトリー
身体性を考えることでテリトリーを明確にする
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東西アスファルト事業協同組合講演会

建築とテリトリー

横河 健KEN YOKOGAWA


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身体性を考えることでテリトリーを明確にする

名古屋の、とあるメーカーのオーナーのための東京の住まいとして設計しました。奥にそのオーナーの住宅、手前に賃貸住宅が、スタジオタイプ二戸とファミリータイプ二戸の計四戸設けられています。

この住宅は、前面道路側から奥に向かって並行に配置された六枚の壁と、それによって生じる層を直角に貫通する街路と呼んでいる部分からなっています。この層と街路が、オーナ−住戸と賃賃住戸の間に、風の吹き抜けるコモンスペースやオーナーズコートと呼ばれる中庭を生むなど、さまざまなテリトリーの生成や重ね合わせを行うのです。

まず、桜並木のある前面道路から見てみましょう。エントランスの庇をはさんで右側の外壁は本実型枠を用いた打放しコンクリート、左側の外壁は左官仕上げとなっています。なぜふたつに材質を分けたかといいますと、街路を介して住戸のタイプを変えているからです。右側はスタジオタイプといって、夫婦もしくは、夫婦と赤ん坊が暮らすのにちょうどいいくらいのメゾネット型ワンルーム的住居。左側がファミリータイプといって、夫婦と子供ふたりくらいの家族が住むのに適した住居になっていて、その違いを表現したかったからです。また右側の壁がコンクリートのボックスの一面であるのに対して、左側の壁は層状に重なるコンクリート壁の一枚、という違いを表現したかったからでもあります。

庇の張り出したエントランスを入って真っ直ぐに進みますと、左手に住戸と住戸の間の外部空間を見て取ることができます。ふたつのファミリータイプの住戸の間に設けられたバッファーゾーンで、風の抜けるコモンスペースと呼んでいます。

そして、正面にガラスの扉が設けられていますが、この扉の奥がオーナーの住居です。この扉のガラスにはストライプ状の加工が施してあるので、直接的にオーナー住戸をのぞくことはできません。この扉を開けると、正面に玄関、左側にオーナーの庭、オーナーズコートが現れます。この通路には、上にガラスの載ったアルミルーバーが架けられていますので、雨はかかりません。ですから、外部でありながら内部的で、通路でありながら庭の一部であることがおわかりになると思います。それぞれの機能やテリトリーがオーバーラップして、庭だけ、街路だけではつくり得ない豊かな空間が展開するわけです。

街路の右側は主寝室です。つまり寝室が直接庭に面していることになります。家族はもちろん、お客様も通るアプローチに面して寝室を設けるということは、住宅設計の教科書的なセオリーからははずれるのですが、人目を避けたいときには障子で見えなくすればいい、ということで実現させてしまいました。プライバシーの高いところとパブリックな部分をあえて組み合わせるということも、条件さえ許せば面白いのではないかと思います。

玄関の階段上にはトップライトがありまして、そこから光が降りてきます。ほのかに玄関が明るくなるというよりは、陽の差し方で一日の陽の動きがわかるようにくっきりと光が落ちるトップライトです。ここの天井高は階段踊り場下なのでとても低く2.1メートル程度です。建築には陰影とか抑揚とか深度といったことが大事だと思っていて、それを表現するために、ここの高さは低めに設定しました。床はトラバーチンの水磨きです。面脇の壁は本実型枠を使った打放しコンクリートです。

階段は壁からキャンティレバーで出ています。踏み面は、外側が木のフレーム、その内側には牛革を張っています。手招りは黒、繊細な一本のバーからなっています。照明は電球が見えないよう踊り場床の端部に隠しました。

玄関正面を左手に折れると居間です。ここもスタジオタイプ住戸と同じように扉がありません。空気はつながっています。居間に設けられているコンクリート製の暖炉は、冬場はもちろん居間の暖炉として使うわけですが、外部庭側からはバーベキューコーナーとして使えるようになっています。

居間のテープルや家具といった、より体に近い部分のデザインはとてもデリケートなものです。ですから、よりシビアに、かつできるだけ自分でデザインしていこうと考えています。ダイニングの椅子は十年はど前からデザインを続けているもので、Zenチェアーと呼んでいます。材質は無垢材で、日本のサクラ、アメリカンウォールナット、ビーチの三種類があります。テーブルランプはこの住宅のために新しくデザインしたものですが、できたら商品化したいと考えてます。

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