アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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隈 研吾 - 小さな建築
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2012 東西アスファルト事業協同組合講演会

小さな建築

隈 研吾KENGO KUMA


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水ブロック/ウォーターブランチ

次にご紹介する「水ブロック(2007年)」も、素人でもつくれる建築です。ミラノで開催されたTokyo Design Premio 2007の展覧会で展示したパビリオンです。ポリタンクに水を入れて重くし、ブロックのようにそれらを組み合わせていって空間をつくっています。ひとつのブロックは38×19センチで、これくらいの大きさであれば、水が入っていても、ひとりで運べるサイズとなっています。1〜2時間くらいである程度の大きさのパピリオンを組み立てることができます。

この「水ブロック」をもう少し進化させたのが、「ウォーターブランチ(2008年)」という、MoMAの展覧会に呼ばれてつくったパビリオンです。先ほどのブロックよりも少し長めの枝のようなパーツを、プラスチックの回転成形でつくりました。回転成形は、プラスチックを流し込んだ型を、ぐるぐる回転させて遠心力をかけてプラスチックをつくる方法です。通常のペットボトルのようなプラスチックは射出成形でつくるのですが、型代が非常に高いのです。回転成形を選択したので、型代をひとつ100万円くらいに抑えることができました。このブロックは、いろいろな組み方ができ、持ち出しも可能となります。また、パルブをふたつ付けているので、全体に水を流すことができます。

「ウォーターブランチ」回転成形用の型
「ウォーターブランチ」回転成形用の型。
MoMAで展示した「ウォーターブランチ」のパビリオン
MoMAで展示した「ウォーターブランチ」のパビリオン。

その後、「ギャラリー・間」で開催された私の展覧会では中庭でこの「ウォーターブランチ」の仕組みを使って、実験住宅をつくりました。外部に同じ「ウォーターブランチ」でつくったヒートコレクターを設置し、そこでつくった暖かい水を家全体に流すことで、内部が暖まります。既成インフラに頼らず、自分たちでエネルギーがつくれる、というのが非常に大切です。既存のインフラがいかに頼りにならないかということは、地震の際に皆さん感じられたと思います。「ウォーターブランチ」というひとつの材料だけで、すべてをつくることができる。これは、先ほどの話で言う、細胞なのですね。人間は骨髄で細胞をつくり、その細胞が分化していって、心臓にも、皮膚にもなるのです。細胞のように、元はひとつのものが変化し、多様な全体をつくっているということを、建築でも実現できればとても画期的だと思います。私はそれをめざし、この「ウォーターブランチ」をつくりました。

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