アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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内藤 廣 - 空間から時間ヘ — 時・時間・時代への眼差し
建築家のやるべきことはたくさんある
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東西アスファルト事業協同組合講演会

空間から時間ヘ — 時・時間・時代への眼差し

内藤 廣HIROSHI NAITO


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建築家のやるべきことはたくさんある

大変厳しい状況の中、建築に関わる多くの方が、その厳しさをひしひしと感じていると思います。また、多くの若い人たちも、自分たちの将来はどうなるんだろうと不安を感じていると思います。僕自身も大変な時代にめぐり合わせたなと思っています。人によっては数百年に一度の世界的な大きな変革期だといったりします。日本では、おそらく明治維新以降、最大の大津波だと思います。おそらく、財政改革が数年のうちに行われると、もっと大変なことになります。

僕は昨年の四月から、大学の土木の教官になり、土木関係の方とお目にかかる機会も多いのですが、ともかくみんな、今、自信をなくしているんですね。僕はこういう時代だからこそやるべきことはたくさんあるし、誇りをもってやるべきだと思っています。建築に関わる人間は、何ができるのかを問われているのだと思います。

例えば、みなさんはどのくらいの未来を想定して建築を設計しているか、考えてみて下さい。建築というのは本来、30年から50年、うまくいけば100年、もっとうまくいけば200年というスパンで考えなくてはいけないものです。そういう未来を考えた時に、日本がどうなっているか、世界がどうなっているかということを果たして考えながらつくっているでしょうか。20世紀初頭、世界の人口は14億人くらいでした。それ以前、17、18世紀あたりではだいたい5億人くらいで推移していました。

それが産業革命後に14億人になり、そして今は62億人です。わずか100年で40億人ほど増えたわけです。そして、今、設計している建物がもつであろう50年後、人口は100億人を突破するといわれています。

一方、日本はどうなるかというと、人口はこの2、3年でピークに達します。それが50年後には、現在の約七割になるといわれてます。ということは、7000万人から8000万人が日本の人口となります。100年後は半分くらいで約6000万人。つまり、これから世界で起きてくることのベクトルと日本で起きてくることのベクトルは、異なる方向に向くわけで、そこでどうするかということが大問題なのです。どうするかは、若い世代が真剣に考えなくてはいけません。名古屋大学の林良嗣先生などもおっしゃっていますが、日本から一歩外に出るとものすごい人口増があって、3000万人くらいの都市が世界中にたくさんできてくるというのは確かなことです。反面、日本の中でいうと、都市はもっとコンパクトにつくり変えないと郊外型の住宅地は成り立たないし、インフラストラクチャーが成り立ちません。つまり、やることはたくさんあるのです。建築関係者が本気に取り組まなくてはならないことは山積みです。ですから、間近の話だけに目を向けるのではなく、少し遠い未来を見据えて、アイデアと知恵を出すべきだと思います。社会基盤投資ができるこの10年くらいの間にそれを提言してつくらないと、日本はがたがたになると思います。

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