アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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伊東豊雄 - 東日本大震災後の一年を考える
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2011 東西アスファルト事業協同組合講演会

東日本大震災後の一年を考える

伊東 豊雄TOYO ITO


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何のために建築をつくるのか

事務所のスタッフからでさえ、こういう素朴な木の小屋をつくると言った時に、「伊東さん、そんなものでよいのですか。今まで伊東さんがつくってきた建築と全然違うじゃないですか」と言われました。しかし、これでよいのです。これだからこそ、みんなが一緒になってつくってくれるし、みんなが喜んでくれるのだと思います。

そこには、すぐに解決できるわけではないですが、今回の私の大きなテーマがあるのです。

建築家は建築家のために建築をつくってはいないか。誰のために、何のために建築をつくっているのか。白い、庇のない家をつくって、それを宮城野区に持っていって、住民の人たちに、「これが私たちがつくりたい家だよ」と言えますか、とスタッフに問いました。こたつもあって、ストーブもあって、畳もあって、そういう家でよいのだと思いました。

こういう家を今、妹島さんも、山本さんもつくっていますし、私もまた釜石市で商店街の復興のために考えています。2012年の6月頃には数軒の「みんなの家」ができるはずです。こういうことをやることによって、「家」というものをもう一度考えてみたい、そこからもう一度建築を組み立て直したい、というのが、私がこの一年で一番考えていることです。

これからも釜石市通いは続くと思います。私は「みんなの家」を100戸くらいつくりたいのです。公共はこういうことをやってくれないので、世界中からお金を集めて、おそらく今年中に10戸くらいはできると思っています。「みんなの家」はここに住んでいる人がつくるものです。こういうものがひとつの街に、たとえば釜石市に20戸あったとしたら、自ずから復興の計画ができ始めるのではないかと思います。大げさに言えば、これは民衆の一揆なのです。政府による復興も進まず、自治体がつくるものではどこも均質な街になってしまいそうという時に、「みんなの家」のようなものが100戸くらい東北にできていったらすごいことになると思っています。

ここでいったん震災の話は終わりにして、この一年で竣工した建築や、現在進行中のプロジェクトをご紹介します。

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