アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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藤森 照信 - 自然を生かした建築のつくり方
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自然を生かした建築のつくり方

藤森 照信TERUNOBU FUJIMORI


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鸛庵
「鸛庵」外観

外観

茅葺きに挑戦した最初で最後の作品が「鸛庵(こうのとりあん)(2015年)」です。これは、オーストリアのウィーンから南に位置するライディングという街で、5m四方の大きさのゲストハウスをつくってほしいと依頼された計画です。また、コウノトリが来るようにしてほしいという条件もあり、一本の柱を屋根から突き抜けさせ、そのまま13m上空にコウノトリの巣の台座をつくりました。

外壁には焼杉を張りました。それがきっかけで、ヨーロッパへ焼杉が紹介され、使う人が増えてきました。またこの時、アルプス山脈より北側では木が腐らないという衝撃の事実を知りました。計画当時、地元の方と話していると、食い違うことが多かったのです。私が、雨仕舞いをどうすれば木が腐らないかということについて提案すると、地元の方は真顔で「日本では木は腐るのですか?」と尋ねてくるのです。これは、本当にびっくりしました。オーストリアで木を腐らせようと思うと、土の上に寝かせて何年か経ってやっと下の方から腐ってくるのだそうです。つまり、土と接していない限り、雨に当たっても木は腐らないのです。そのため、ドイツにはかつて100mを越える高さの木造の通信塔がありました。木をただボルトで締めて繋いだだけのタワーですが、本当に腐っていないのです。風で揺れて危険だという理由で、取り壊されましたが、同じ技術でつくられたもので、ポーランドのグリヴィツェのラジオ塔(1935年、111m)は今も残っているそうです。木が腐らない理由は簡単で、ヨーロッパのたいていの場所は、冬がやたら寒く、夏はやたら乾燥しています。つまり、木の腐る原因となるバクテリアが繁殖できるような湿度と温度が同時に高くなる時期は、春と秋の短い期間だけなので腐らない。


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