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東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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隈 研吾 - フィクショナルな都市からインタラクティブな都市へ
リゾートというフィクショナルな環境づくり
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東西アスファルト事業協同組合講演会

フィクショナルな都市からインタラクティブな都市へ

隈 研吾KENGO KUMA


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リゾートというフィクショナルな環境づくり
マイトン・リゾート
マイトン・リゾート

次に紹介するのは、いわゆるリゾートをつくりながらそれをどこまで解体できるかという試みでタイのプーケット島につくった「マイトン・リゾート」です。

タイに行ったことのある方はご存じだと思いますが、南のほうにプーケットという島があります。ここはヨーロッパ系のホテルがほとんどで、東南アジアではバリかプーケットかと並び称される代表的なリゾート地です。そのプーケットの南の沖合8kmのところに離れ島があり、その島全体をリゾートにしたいということからスタートした計画です。

余談になりますが、この島はタイの真珠王と称された大金持ちの方が個人で所有していた島で、その方のたいへん美人の奥様が日本人で「是非、日本と一緒にこの島を開発したい」ということで巡り巡って私のところに設計の依頼がきたという経過があります。

マイトン・リゾート
マイトン・リゾート

島の全長は2kmで、全くなにもない島です。つまり電気も水道もないということで、そこにリゾートをつくるとなると、まず発電所が必要になる。それから水はこんな小さな島でダムをつくるわけにもいかないため、上下水道を全部新たに敷設するということから始めました。ロビンソン・クルーソーが現代にいたらこういうことをするだろうということをやったわけで、最初からこれほどたいへんだとわかっていたらやらなかっただろうというぐらい、いろいろたいへんな思いをしまいした。

全体は赤い屋根の75個のコテージと白い建物のレストランやプールから構成されております。プーケットには唯一の建築法規があり、それは「ヤシの木より低い建物」というものです。「それは何メートルですか」と聞くと「ヤシの木の高さだよ」という答えが返ってくるというところです。したがって高い建物にしないで、それぞれの施設を小さくばらして、コテージスタイルを採用しました。

コテージはタイのスタイルを踏襲した建物になっていますが、共用施設のあるセンターゾーンでは、古典主義的なモチーフをいかにフィクショナルなスタイルに変換できるか、という試みをしています。フィクショナルに変換するという操作を通じてメルヘンを解体しようとしたわけです。それぞれの建物のペディメントの部分を、ステップドペディメントで階段状にしたり、角が生えたようなものや大洋などの形がありますが、それをなるべく薄いものに見せたい、奥行きがあって陰影ができるようなものでなく、看板のように見せたいと考えました。それが、現在のリゾートという非常にフィクショナルな性格のものを表現するのに最適だろうと考えたわけです。建物も一棟にまとめてしまえば簡単なんですが、全部をばらして断片化しています。表層化と断片化がフィクショナルにするためのたいへん有効な手段になっています。この計画で私の頭の中にあった概念はフィクショナリティでした。

あまり日に焼けないでいつでも泳げるようにしたいということで、屋内プールもあります。屋外プールのプールサイドにはバーがあり、インド洋を眺めながら一杯やることができます。レストラン棟もそれだけで独立した建物になっています。海側、プール側、それぞれ異なるペディメントを持った、断片化されたファサードです。

マイトン・リゾート
マイトン・リゾート

技術的な背景でいうと、タイでは日本で当たり前のようにできることができなくて、日本ではもうできなくなっているようなことができたりします。たとえば、左官仕事が非常に優秀で、どんなめんどうな形もモルタルを5センチでも10センチでも練って対応してくれます。

ところがインテリア・ワークになると、ちょっと複雑になっただけでもうできなくなったりします。

さらに都合の悪いことに、ここではインテリアと建築は全く別の工事という勧化方が一般的です。それによって随分ひどい目に会いました。ホテルができて内部に家具を入れる段階になって、ベッドにきれいなシーツが敷かれたら、建築を担当していた職人が「これはいい家ができた」といってそこで寝て、住み込んでしまったんです。それだけでも私はびっくり仰天だったのですが、おまけに、そこに入れたチークのテーブルをまな板の代わりに使い、肉や野菜をバンバンと切って料理をしてテーブルを傷だらけにしてしまうという具合に、他人がやった仕事に関しては、全然無頓着という姿勢が徹底しています。

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