アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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妹島 和世 - 自作について
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東西アスファルト事業協同組合講演会

自作について

妹島 和世KAZUYO SEJIMA


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はじめに

私は、小学校の頃に菊竹清訓さんの「スカイハウス」から強い印象を受けました。大学に入ってから「スカイハウス」が有名な建築家の家だと知って、出会いのおもしろさを感じました。

今日は断片的ですが、私の自作についてお話しします。私はここ二、三年、「フレキシビリティ」について考えています。四、五年前、CGをやっている友人と建築に関係のある方に続けてお会いしたときに、ひとりから「妹島さん、ぼくは自分の家をつくるのに建築家とやってたんだけど、やっぱり大工さんにつくつてもらったほうがいいのではないかと考えるようになったんだけど、どう思う」といわれました。次にもうひとりには、自分のいいっていうものをつくりたいと思ってたんだけど、いろいろ考えていったら普通のマンションのほうが自分にとっては快適だと思うようになった、といわれました。

そういうほうが自分たちにとって「フレキシブル」だといわれ、私としても、確かにそうかもしれないと感じるところがあります。こういう空間が快適であるとか説明することとは違ったもの、空間が変わらなくても使う人たちが空間にフレキシビリティさを感じられるものについて、私は建築をつくつているわけですから、何かそういう空間ができないかとプロジェクトごとに考えています。

二年半ほど前に、古い倉庫に事務所が移りました。ワンルームで六十五坪ぐらいのスペースです。これまで、ワンルームで仕事をしていれば何となく自然に、事務所内で起こっていることがお互いにわかっているのではないかと思っていました。また以前は、事務所内を歩いて製図板上の図面を見れば、進行中の仕事がわかりました。

ところが、ちょうどその頃からコンピュータを使い始めたのですが、状況がかえってわかりにくくなり、ちょっと不便だと思うようになりました。それがさらに進んで、スタッフが携帯電話を持つようになると様子がまったく変わりました。つまり、以前なら、スタッフのだれかが電話に出て、「だれだれさん電話ですよ」といえば、ワンルームの中で響き渡りますから、何となく仕事で何かトラブルでも起こっているのではないかとか、友だちからの電話であったのだとかわかります。しかし携帯電話ですと、緊急の用事であっても何が起こっているのかよくわかりません。さらにメールを使うようになってきたので、情報が事務所に送られていること自体もわからなくなりました。

そうするとコンピュータで何をやっているかもわからないし、違う内容の電話が話されていたりするので、まったく違う空間がオフィスの中で立ち上がっているようにも感じます。ほんとうに、一般的にいわれている情報空間のイメージは、私の場合には、すごく身近なものになってきています。自分が建築を勉強した時には、ワンルームにいれば自然にコミュニケーションができると思っていたのですが、それがまったく違う。いまだに空間にそういう力というか性質があることは否定できないし、空間がもっている力のようなものとか、性格のようなものはずっと流れているものもあるけれども、片方でまったく違う空間が生まれ始めていることを感じます。そのときにもう一度、実際に建築をつくっていくときにどういうことが考えられるのか、挑戦してみたいと思っています。

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