アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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隈 研吾 - 物質性とサイバースペース
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物質性とサイバースペース

隈 研吾KENGO KUMA


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北上川運河交流館
「北上川運河交流館」川側からの外観
「北上川運河交流館」川側からの外観
内部から北上川を見る
内部から北上川を見る

今の建物のすぐ近く、北上川を少し下った石巻に「北上川運河交流館」があります。北上運河という日本でいちばん長い運河が北上川と交差するところに記念館を建てたいという依頼で、それに対して僕が提案したのは、土手の中に建物を埋設してしまうという解決でした。

ここにも細い亀裂があって、この亀裂から入っていく入り方と、大回りして川側から入っていくというふた通りの入り方があります。建築を埋めるようなやり方、しかもただ埋めるというのではなく、建築が道路の一部になって欲しいという仕掛けがあります。土手の上を通っている道路から迂回するようにしてスロープを降りていくと、そのまま地下に降りていって建物の中に入ります。そして建物の中を通り抜けたスロープは再び地上に上がってくる。ですから建物は筒単にいうとスロープに屋根をかけたようなものです。土手を散歩をしてきたついでに寄り道をすると、途中にいくつか展示してあってまた知らない間に土手に戻っている、という構成にしたいと思ったわけです。建築の上も道で、屋根の上も歩けるようになっています。

建物の中から北上川を見たときに目につく庇や家具は全部ステンレスのパイプのルーバーでつくっています。川の水の流れがルーバーのモチーフになって、壁とか屋根、それから家具がつくられているわけです。

内部の展示は映像とゲームになっていまして、パネルを展示するのではなくて、絶えず流れているようなものになっています。ゲームは運河のことを勉強できるようになっていて、近所の子供たちがこのゲームをすごく気に入って、学校の帰りにみんなたむろするスペースになっています。

「北上川運河交流館」断面
「北上川運河交流館」断面

このように土手に手をつけることは、ひと昔前は建設省(現国土交通省)が厳しく制限していました。建設省にはいろいろな部署がありますけれど、中でも河川の担当部署はいちばん厳しくて、川の回りに手をつけるのは絶対ダメといわれていました。しかし建設省自身が、これからは土手の周りに親水空間をつくっていこう、という大方針転換を二年前にしていまして、その最初のモデルプロジェクトということで実現しました。

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