アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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西澤立衛 - 自作について
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2007 東西アスファルト事業協同組合講演会

自作について

西澤 立衛RYUEI NISHIZAWA

西澤立衛-近影

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EPFLラーニングセンター
キャンパスの中央に位置する
キャンパスの中央に位置する
コンセプト図
コンセプト図

今日お見せする最後のプロジェクトです。スイスのローザンヌに建つラーニングセンター、学生会館の計画です。

ローザンヌにはスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)という有名な大学があります。その大学のキャンパスに建つ学生会館というのがこのプログラムです。場所が非常に素晴らしく、ジュネーブ湖、フランスではレマン湖といってル・コルビュジエが「母の家」を建てたところで有名なところですが、その先にアルプスが見えるというような美しいスイスらしい風景です。このキャンパスの正面の駐車場をつぶして、そこに学生会館を建てるというものです。

ここがラーニングセンター、われわれの敷地です。学生会館というのは何かというと、図書館、展示場、多目的室、カフェ、レストラン、オフィス、学生が使うありとあらゆるものが集まっているコンプレックスです。たとえばオフィスビルというとどの部屋もオフィスですし、美術館といえば全部展示室なのですけれども、これはいろいろなタイプのプログラムが集まるということで非常に苦しみました。ひとつの形では解けないのです。

平面
平面

最初は、風景がきれいなので高いところにレストランをつくって湖を見たいというのがあり、オフィスビルのように積層していくビル型を考えていました。しかし積層していくと各階が同じ平面になりがちなのと、コアという垂直動線が非常に大きくなってしまいます。また、各階が全部向じになってしまう。オフィスのプロジェクトであれば、基準階平面ができてよいと思うのですけれど、今回のような多種多様な機能が集合するプログラムの場合は、図書館だったりオフィスだったり劇場だったりがみんな同じ基準平面を使うというのは最適な形で答えられていないような気がして、積層型というのは今回のプログラムに合わないと思いました。

建物は緩やかにうねった断面をしている
建物は緩やかにうねった断面をしている
建物がジャンプして緩やかに上がっていき、下部はピロティ空間となっている
建物がジャンプして緩やかに上がっていき、下部はピロティ空間となっている

最終的に考えたのは大きなワンルームをつくって、全プログラムがそこに入るというものですね。ただ、平屋でワンルームとすると湖が見えないので、建物をゆっくりスロープ状に上げていって二階レベルまでもっていくことにしました。屋根とスラブが平行に上がっていくわけです。そうすると平屋なのに高いところまで行けます。また、建物の下がピロティみたいになる。そこはオープンスペースです。そこを通って人びとがアプローチしてきます。普通、建築物というのは入口が端にあるものです。建物に入る所は端にあるものなのですけれど、この建物はジャンプしているのでエントランスを真ん中に配置できます。最初に真ん中にアプローチして、好きなプログラムに向かって散るという、動線としては非常に単純な動線計画というのを目指しています。

これはコンペ時につくったダイアグラムです。平屋ながらいかに湖が見えるかを説明しています。建物を上がっていくと湖の逆の建物の奥深くでも、湖が中庭ごしに見えるという形をつくることで、平屋ながらも湖が見える状態をあちこちにつくれます。

全長10メートルに及ぶ巨大模型がつくられた
全長10メートルに及ぶ巨大模型がつくられた
屋根とスラブ
屋根とスラブ

先ほど話しました「SANAA展」は「金沢21世紀美術館」からはじめたのですけれども、これはその時につくった「EPFLラーニングセンター」の巨大模型です。10メートル以上の模型ですが、スラブがジャンプして、屋根とスラブは平行関係を維持しながら、天井高が同じまま上下関係が変わっていくという動きが立面に表れています。

これはその高度差を高いところも低いところも全部並べた平面図です。この斜面の線が等高線です。斜面だったり、階段がついたり、交通機関つまり斜めに上がっていくエレベータがついたりというもので、いろいろな移動手段があります。エントランスに入ると緩やかに上がって、乗り物に乗っても歩いて上がっても、山道のように二階まで連続して上がっていくわけです。

中庭で部屋と部屋を分けるのですが、同時に尾根とか丘によっても空間と空間を何となく分けています。これは丘で、向こう側にオフィス空間があるのですが、このような地形によって向こうが見えないようになっています。全体としては、建築物としてよりは、ランドスケープみたいな建物です。尾根空間ができたり谷空間ができたり、尾根には尾根にふさわしい道や部屋ができたり、谷にはちょっと閉鎖的な空間ができたりなど、起伏に富んだ街が徐々に街になっていくというのと同じような形で、地形とプログラムというものが関係しながら全体ができていきます。

レストランからの風景
レストランからの風景

これはレストランからの風景です。地上のものがジャンプして緩やかに上がっていって図書館にたどり着くというものです。ここは本棚。リサーチコレクションといって閉鎖書架的なところですが本は重いので地面の上に直接置いて、こっちのほうは軽い席なので二階のジャンプしたところに置かれているわけです。中庭を行くとエントランスになっていって、エントランスの先にカフェがあります。これは中庭の中でも一番大きな中庭です。エントランスはこの先の中庭ですけれども、エントランスの庭の隣の庭です。ここにオフィス的なものがあって、上がっていくと、レストランにつながります。

昨年に基本設計をして、今年は実施設計をしていて、先月着工しました。日本と違う施工システムで実設計と施工が並行して進んでいくというものですね。再来年に竣工の予定です。

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