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東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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妹島 和世 - 自作について
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東西アスファルト事業協同組合講演会

自作について

妹島 和世KAZUYO SEJIMA


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岐阜県営北方住宅、S資料館、U‐ビル
岐阜県営北方住宅
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岐阜県営北方住宅

今、工事が進んでいて来年の二月ぐらいに出来上がる集合住宅です。この集合住宅の設計をはじめたときに、集合住宅の研究も委託されたので、その話をはじめにします。住宅を組み合わせて出来上がってくるものが集合住宅なので、それ自体を疑うことなく、都市の中で大きなボリユームをつくっているのですが、それをもう少しコントロールできるのではないかと考えました。

例えば、日本に限らずフランスや韓国の郊外へいったりしても、あれは集合住宅だと誰でもわかるような気がします。それは、集合住宅が住宅を積み上げていっていいのだとして認識されているからです。10,000平米ぐらいの建物を設計する場合、通常1,000平米、2,000平米という大きな部屋からある程度大きな建築ができてくるのですけど、集合住宅に限っては、二畳のお風呂や、四畳半、六畳という小さな部屋をこまごま描いているうちに気づいてみたら10,000平米になっている、というように集合住宅は特殊です。その辺をもう少しボリュームとして最初から考えるべきではないかと思いました。そして同時に集合住宅の内部での生活も変わるべきだと思ってまとめたものです。

そのとき考えたものは、二階建てと四階建てと十階建ての集合住宅についてです。一ヘクタールに、公共の建物ですと約70平米の住宅を120戸から130戸入れるというのが平均的だと思いますが、二階建て、四階建て、十階建てですべて実現できるはずだということを前提につくりだしました。

まず二階建てのパターンです。建ぺい率が60パーセントぐらいで、各家が二層に暮らし、どの家もGL面に中庭と屋上に庭を持つことができます。

四階建ての一つ目のパターンですが、四時間の日照をいかに確保するかと考えた結果、蛇行したかたちになりました。四で割ると一棟分の建築面積が決まってきます。すると自動的に奥行きが決まります。非常に奥行きのあるスペースができることになります。パブリックな場所とプライベートな場所二つずつの細いチューブを客家に持たせて、それが他人の家の吹抜け越しにつながっている場合もあれば、自分の家の上に乗っている場合もあり、また、ピッタリくっついている場合もあります。二階の一部分と四階の斜め上が自分の家というように立体的に組み上げていくことを考えました。

四階建ての二つ目のパターンです。ロの字型に閉じています。この場合、中庭と外庭の関係を考え、積極的に両方に面した暮らし方ができるようになっています。

次は十階建ての場合です。四階以上になるとどうしてもエレベータでアプローチすることになり、そうすると共用廊下が出てきますので、共用廊下が出てこない限界を四階と設定してつくりましたから、この高層タイプの場合は高い代わりに薄いポリユームにしようとしました。客部屋が全部採光面に向いているパターンです。

さらに極端にしていくと、高層林立配置のパターンになりました。県営の住宅など、回りを地域の人たちに対しての公園として開放したいという話がよく出ますが、その場合、住民の生活が公園に出てきてしまうという現実があります。例えば布団が干してあったり、洗濯物が干してあったりする様子が外から訪れてきた人にまる見えになってしまうのです。そこで集合住宅のボリューム自体を公園の要素にできないかと考えました。一つ一つの住宅のプランがそのまま十層建ち上がるという考え方で、細いスリットのところがプライベートとさらにパブリックな場のバッファーゾーンになっています。実際非常に極端なプロポーションが敷地の真ん中に建ち上がって、外から見ると壁が見えるわけですが、ボリュームとボリュームの間のスリットがそれぞれの生活と外との中間領域としてあるということです。

進んでいる県営の賃貸しの集合住宅ですが、磯崎新さんのコーディネーションで、四人の女性の建築家が設計しています。一人100戸ぐらいずつ担当していて、トータルで430戸の規模です。もともとは四人の建物をバラバラにして敷地を一周しようという構想だったのですが、エレベータの数などの調整がつかず、最終的にはそれぞれの敷地が与えられて、ルールとしては柔らかく敷地をみんなが囲むことになりました。その中に中庭があります。

私の計画しているものですが、ほとんど敷地なりにかたちが決まっています。簿いボリュームでそれぞれの家が庭を持つことを提案しまして、その庭が穴となって、回りに住んでいる人から道側の景色が見えるような案をつくっています。

全部の部屋が採光面に並んでいます。それぞれの家がプライベートな広縁というか、サンルームのような場を持っていて、それが部屋と部屋をつないでいます。ダイニング、テラス、和室、ベッドルームがあり、例えば下の部屋一つと上の四つが廊下でつながれて一つの家ができていて、そのようにしていろいろな断面の家が組み合わさって、ただの四角い集合住宅が出来上がっています。

各部屋の前は建具でカバーされていて、建具は昔の和室と広縁の関係と同じようなもので、それぞれ廊下越しに光りなり風を取り入れるようになっています。前面から見ると、結局その家のかたちが全部表れて、人がその家を移動している状態がスクリーンのようなかたちで前面に出てくるだろうと思います。

S資料館

間もなく現場に入る、山の中の小さな資料館です。計画自体は先ほどの美術館とほぼ同じ時期に行っています。目の前には畑が広がっています。山の中腹に敷地があってそこには重要文化財の古い建物があり、そこから20メートル離れて建てるということで、ほとんど位置が決定されているので、山に沿った細い建物になってます。少し浮いた感じで山並みの中にすーっと建築が横たわるんですけど、そこに一部映る素材を使って、下の畑なり風景が背後の山の中に溶け込むような建築をつくろうとしています。

U‐ビル

今、私たちはオフィスビルを二つつくっています。どちらも普通のオフィスビルで3000平米弱の建物です。

一つは六階建てのオフィスビルなんですが、新しくできるJRの駅前広場に面して開発の拠点となります。駅からのコンコースが入り込んできて、二階はその通り道になって、そこにはバスのチケット売り場や、銀行のATMや旅行代理店などが入ります。一階はコンビニエンスストアやファミリーレストランが入って、四階から六階がオフィスという構成です。オフィスビルであることと同時に、駅前広場に建つということについての提案を求められました。ガラスのルーバーのファサードをつくって、その角度を少しずつ動かして回りに広がっている景色を立面上でもう一回ミックスし直そうと試みています。つまり下の緑が高いところに映ったり、空が低いところに映ったりして、人が下を歩いているときと、五メートルのデッキのレベルと、さらに駅のもっと高いレベルから見たときと、違った景色が組み立てられます。

以上で終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

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