アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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小嶋一浩 - 越境的思考の可能性
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2004 東西アスファルト事業協同組合講演会

越境的思考の可能性

小嶋一浩KAZUHIRO KOJIMA


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芝浦アイランドの集合住宅
模型
模型
ヴォイド
ヴォイド

都市基盤整備公団のプロジェクトです。僕らが組織設計事務所と組んでコンペで一等を取ったのですが、その後、国の方針が、公団はできるだけ土地のままで民間に売りなさいというものに変わったために、空中分解してしまいました。

日本の集合住宅のタワーは太いと思います。ミースのレイクショアドライブ・アパートメントは、日本の感覚でいえばすごく細い集合住宅です。太くするのはローコストにして、たくさんの住戸を詰め込もうとするからで、これだと奥行が深くて窓が小さい家になってしまいがちです。まん中にヴォイドを設けている例もありますが、かえって薄暗い井戸のように思いました。でも、公団の仕事では細い集合住宅は受け入れられませんし、耐震にもお金がかかるとかいろいろいわれるので、思いきり太いのはどうだと提案したのがこの案です。

超高層につきものの、エレベータや特別避難階段によってできるシャフトをなくしてしまおうというのがもうひとつの提案です。エレベータはまっすぐ建っていますが、いわゆるコアがありません。また、三つの棟が相互にお見合いにならないように配置しています。

奥行の薄い部分も意識的につくっています。妹島和世さんの岐阜県営北方住宅はどにはなりませんが相当に薄いです。

集合住宅に穴を空けることは珍しくありませんが、視線が三つの棟を連続して貫通するような穴を考えました。まわりが運河なのでいろいろ軸線を引いて、多くのパースを描いて検討しています。たとえば、足下の水面からA点を通してB点とC点に抜けていく軸をつくり、そこに視線を通すような空間の組み立て方を考えました。

ランドスケープは宮城俊作さんとの協働です。住宅自体は「白」のボリュームとし、最低限の設備をつけて売り出して、その後に改装した分を付加価値にしてストックしていけるようなシステムも提案しています。

このプロジェクトが消減してしまったことに象徴されているのですが、日本国内の公的な仕事では、発注者が建築や空間に期待していないために制度との戦いになってしまうことがよくあります。国内でも海外と同様にわくわくしながら設計できたらいいなあと思っています。

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