アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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六角 鬼丈 - 「地・水・火・風・空」
東京武道館のこと-5
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東西アスファルト事業協同組合講演会

「地・水・火・風・空」

六角 鬼丈KIJO ROKKAKU


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東京武道館のこと
5
風の彫刻が並ぶオープンデッキ
風の彫刻が並ぶオープンデッキ
航空写真
航空写真

これから出てくる写真で、菱形パネルの色が何でこんなに色が違うんだろうと思われますので説明しておきますが、この辺のパネルとこの辺のパネルにつきましては実はほぼ同じ色のものです。ただベースにこちらぐらいの紫を塗ってその上にシルバーをかけたメタリック塗装の建物なので太陽が直接当たると白く銀色に見えます。だんだん陽が落ちて影の部分になりますと若干紫を帯びた色になります。したがって午前中に撮った写真と午後に撮った写真や、影で撮った写真では全部色が変化してきます。それはあえてそういう狙いでやっています。

ここはオープンデッキです。山と山の谷間みたいなところを上っていく過程で視覚的に全体を見渡せるところと、もうほとんどパネルと接してしまいそうなところとレベルを変えながら組んでいます。

これは屋根の部分のディテールに近いところです。実際に組まれている所です。やたら谷が多いので雨水とか雪処理が当初から問題になりました。それで絶対漏らすなと相当細工をしています。下からステンレスの底樋が立ち上がっていて、その上からパネルを全部かけている。したがって谷になった部分は全部二重張りになっています。不思議なことにこういう危ないなと注意してやったところは雨が漏ることが少なくて、真っすぐな部分でここだけは大丈夫だろうと思ったところに欠点が生まれるもので不思議なことです。

実際できてからは雨はほとんど漏ってないんですが、こういう谷で一回漏ったことがあるんです。その理由は溶接をしたときに飛んだ火花のピンホールが原因でした。今のところは重ね部分から漏っていない状況です。この辺の小さい穴は全部オーバーフロー用のものです。

これはグラスファイバー入りの和紙状のガラスを使ってみたんですが、やってみてちょっとテクスチャーが強かったと思っています。

同じような写真が出てきて菱形だらけでどうなるんだと思われるかも知れません。われわれのスタッフも最後のころになるとお前の目は菱形になっているというような会話が飛び交っていました。

先ほどの写真は午前中でこれは夕方に近い状況です。実際にこれぐらいの色の変化があります。夕暮れにはもっとどす黒くなってきます。私としましてはとにかく大きな造形を組み上げて大きなリズムをつくって、それから二次的に発生してくる開口部の形体的菱形のリズムに対して変化を与えたいときには、これが親であれば親子の関係にしてしまうか、さらにこれからドアに移ると親子やら甥っ子あたりにいったり、どうしても親族関係で結べない場合はときどき養子縁組してもらうような縁故的なデザインとして全体をまとめました。したがって出っ張ってしまったりへこんだ隅々は臨機応変に始末していっています。

入り口からずっと歩いて階段を上って、これから奥にいくオープンデッキ沿いに風の造形が並んでいます。このオープンテラスは「風」をテーマにした新宮さんの彫刻を辿っていくと裏の道まで出られるように計画したものです。

こちらは一般利用のときの正面玄関です。後で夜景が出てくると思いますが、ここには火の照明が仕掛られています。篝火ですね。

これは入り口を横から見たところです。ここだけフレーム状になっています。すべて菱形を構成していくときに、たとえばこちらの階段室のあたり、もしくはエントランスのあたりに菱形の発生源を置きたいという気持ちがありました。ここだけ菱形の中身、骨の表現としてちょっとシンポリックなゲートとして設けています。これだけはチタンでつくられています。

軒に関しては二本は庇をささえる肘木になっていますが、真中の一本は樋です。各谷の樋を一つずつ分流させ、後は屋根裏を横に引っ張ってすべての雨水を軒先に落としています。

ファサード
ファサード

この照明器具はアッパーライトとダウンライトを兼ねています。石は部分的に素材として使っています。最初はもっと石を使いたかったのですが、だんだん予算がなくなって最後に本当に表面の皮一枚だけ石を貼っています。この建物は坪単価の高い建築物とは現状ではいえないのですが。

この隙間は中からたばこを吸いたい人が出てくるテラスになっています。屋根と躯体の接点部は、屋根と下半身のRC構造との間をがっちりした肘木で受けるのではなくて、ごく自然にどちらかが染み込むような形で処理していこうというのが全体に渡っている方針です。

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