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東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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山本 理顕 - 地域社会という建築
地域社会を再提案する建築を考える(3)
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東西アスファルト事業協同組合講演会

地域社会という建築

山本 理顕RIKEN YAMAMOTO


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地域社会を再提案する建築を考える(3)
埼玉県立看護福祉大学(仮称)
岩出山町立岩出山中学校
岩出山町立岩出山中学校

ちょうど着工したばかりですが、埼玉県にある看護福祉系の県立大学です。五万平米という非常に大きな大学です。四年制の看護学科、福祉学科、リハビリテーション学科と、短大をここにつくります。

医療のヒエラルキーがあって、一番上に医者がいて、看護婦がいてという序列がありますから、看護婦なり福祉士など、従来は医者のアシスタントなので、看護婦の養成学校とは医者のアシスタントの養成学校だと思われてきました。しかし、将来的には大学院をつくる計画もあるこの学校は、医者のアシスタントのためだけにあるのだろうかと、私はコンペのときに疑問に思いました。先ほど地域社会の話をしましたが、これから先を考えていくと、地域社会の中でダメージを受けている人、高齢者がこれからますます増えていくとしたら、ここを卒業した人たちがその地域社会の中に入っていき、医療や看護のシステムを担っていくことは十分に考えられると思うんです。そうすると、看護士たちがその地域看護の中核を担っていき、さまざまな医者たちが特殊技能士として存在する、という構図のほうが正しいような気がだんだんしてきました。地域看護を考えていった途端に構図が逆転してしまったのです。

吹き抜けを介して左右に生徒ラウンジが設けられている
吹き抜けを介して左右に生徒ラウンジが設けられている
教室棟と芸術棟を結ぶ渡り廊下
教室棟と芸術棟を結ぶ渡り廊下

それで、この大学で提案したのは、個々に学科がばらばらとあるのではなく、お互いがお互いを補完し合うような一つのシステムとしてつくろうということです。従来ならば、学科ごとに分棟式でつくるわけですが、そうではなく、全体を一体のものとして考えられないかと提案しました。

大学棟があり、短大棟があり、非常に大きなギャラリーがあります。ギャラリーを中心にして、全体で一つのシステムが組めないかという提案です。

なるべく融合するように考えていますが、実際にプロジェクトが動き出すと、従来どおりの一種のセクショナリズムがどうしても出てきます。ですから私は、なるべく外からその学科でなにをしているかが見えるような大学にしたいと思っていますが、どこまで実現できるかまだわかりません。今、現場に入っていますけれども、まだ予断を許さない感じです。ひょっとすると閉じてほしいという意見が非常に強く出てくる可能性はまだ残っています。

岩出山町立岩出山中学校
図面

去年完成した中学校です。岩出山は過疎化している町なんですが、面積は非常に大きく、農業が主な産業です。この岩出山に今まで中学校が三つあったんですが、それを統廃合して全部で一八クラスからなる一つの大きな中学校をつくる計画です。従来までのホームルーム型ではなく、系列教科教室型のプログラムに則ってつくった学校です。

グラウンド側から見ると、強烈なウイングみたいなものがありますが、この学校は丘の上にあり、北風が非常に強いものですから、一つには風よけの役目をしています。

生徒フォーラムという巨大な空間があり、そこにホームルームの代わりに生徒ラウンジというロッカールームのようなものが並んでいます。

教室は、理数系と言語系と生活系という三つの教科に分かれています。子供たちは、まず自分のロッカールームにいって、それから自分が受ける教科教室にいくという、今までのホームルーム型とはまったく違う教育のシステムを採用した学校です。教室のほかに芸術棟、それから体育棟があります。全部で五つの系列になっている学校です。

また、町の人たちが使うための広場もあります。十年後には生徒数が半滅してしまうものですから、音楽室や美術室、コンピュータ・ルームなどの特別教室は、町の人たちの施設としても使えるように配慮されています。つまり、中学校が少しずつ町の施設に時とともに変わっていくプログラムになっているわけです。

各系列に分かれている言語系、理数系、生活系のゾーンがあります。長い生徒フォーラムがあって、「風の翼」があって、後ろに体育館があって、前に教室があります。そして広場があって、芸術棟がある。全体がストライプ状の層、レイヤーといったはうがよいかもしれませんが、そんなふうになっています。それが透けていて、相互に向こうが見えるような構造になっています。常に向こう側のレイヤーが見えている関係になっているわけです。

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