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東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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藤森 照信 - 自然素材を現代建築にどう取り組むか−九州での経験を通して
自然素材でつくる建築1
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東西アスファルト事業協同組合講演会

自然素材を現代建築にどう取り組むか−九州での経験を通して

藤森 照信TERUNOBU FUJIMORI


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自然素材でつくる建築1

公共建築についていいますと、ぼくが自然素材を使って建築をつくるということから熊本で仕事を頼まれました。そこでこれから自然素材の話をしたいと思います。

当然、日本で自然素材というと木です。次が左官系の土、漆喰です。それから石です。木と土系のものと石、この三つをどうやって建築に使うかということです。

注意していただきたいのは、自然の木を使ったから、石を使ったからそれを自然素材というふうに思わないでいただきたいということです。それは誤解です。

ぼくから見ますと現在の多くの木ははとんど工業製品に近いわけです。石も工業製品といっていいような状態になっています。自然素材の基本は、デコボコしていて、ムラがあって、バラバラだということです。

それから偶然の要素があります。たとえば、木を製材してみると中にスが入っていたり穴が空いていたりします。石でも同様です。変な色がいっぱい混ざっていたりします。傷もついてます。特に木の場合ですが、使ってみるとあばれるわけです。宿命的にあばれます。それから表情を見ると非常に毛深いといいますか、ザラッとした感じがしています。

それに対して工業製品は均質さを基本としています。ですから、木でも石でも工業製品化された自然素材を仕方なしに使う場合もありますが、それはぼくのテーマではないのです。ぼくはあくまで工業製品とは違って自然素材本来の不均質さ、あばれ、それをどう使い、味わいとして生かすかというのが大きなテーマにしています。

それと自然素材と工業製品のもうひとつの大きな違いは風化の問題です。自然素材も工業製品もやがて風化してくるわけです。そのときどういう違いが出てくるかというと、自然素材は風化しても美しく感じられるんです。一方、工業製品はただ汚く感じられます。

神長官守矢史料館
「神長官守矢史料館」全景
「神長官守矢史料館」全景
「鉄平石葺きの屋根と手割りのサワラ材の壁が美しい取り合いを見せる
「鉄平石葺きの屋根と手割りのサワラ材の壁が美しい取り合いを見せる

これは、ぼくの田舎・信州諏訪地方でつくった「神長官守矢史料館」です。

守矢家の今のご当主はぼくの幼なじみです。おじいさんがぼくの名前をつけてくださった縁で子どものころから付き合いがあったので、御当主がぼくを設計者に推薦したのです。

屋根に鉄平石を使いました。これがその鉄平石です。鉄平石は地元の諏訪地方が特産地です。戦前までは屋根材に使っていたんですが、最近でははとんど見られません。戦前からの職人さんにお願いして割っていただきました。ザラザラした味わいと徴妙な色違いがとてもきれいで、すごく上手くいったと思います。

壁は割り板でやってみました。とにかくイデオロギッシュになって自然素材を徹底的に生かそうと思ったので、製材した木ではなく、割った木の板を使おうと思って、たいへんな苦労をして職人さんに割ってもらいました。

戦前は、屋根用の板を製材するのでなく、割り板の職人が手で割っていたことがあるのを知っていたので、その技術を使って割っていただくことができました。おそらく戦後の日本で張られた板壁ではいちばん美しいのではないかと、ぼくは思っています。

秋野不短美術館

次は、「秋野不矩美術館」です。秋野不矩さんは文化勲章を授章なさった女流画家です。その方がぼくの建物を見て、ご自分の美術館をぼくに頼みたいといってくださいました。彼女の出身地の天竜市から頼まれてつくった建築です。

ここで考えたのは、木と土です。できるだけ土壁を荒々しく、冬の凍結融解でも大丈夫なようにつくりました。

「秋野不矩美術館」チェーンソーで削ってバーナーで焼いた柱
[左] 「秋野不矩美術館」
[右] チェーンソーで削ってバーナーで焼いた柱

色つきのモルタル、茶色いモルタルにワラを入れてものすごく粗く塗ってもらった上に、さらに上を水で溶いて、それにハイフレックスを三パーセント入れて刷毛で塗っています。これは雨が当たってもとれませんし、凍結融解によって表面の土が剥げ落ちることもありません。

インテリアはできるだけ木を粗く使ってみようということで、柱の木をチェーンソーで削ってさらにバーナーで焼いています。

現場監督さんに柱の木を焼きたいといったら、嫌だというんです。何で嫌なのか聞いたら、せっかく自分たちが組み上げた木を焼かれるのは嫌だというんです。それなら組み上げる前だったらいいかと訊いたら、いいというんです。そんなわけで木を組み上げる前に別のところで焼いて、それを届けてもらって組み上げてもらいました。ただ、これは努刀したほど効果がありませんでしたから二度とやらないでしょう。

建築家としてちょっと注意していただきたいと思ったのは、こういう美術館の壁の照度分布です。実は、この美術館では照度分布がほとんど一定になり、かつ額縁の影が壁に落ちないんです。これはほんとうにビックリしました。厚さ七センチに挽いた一枚挽きの大理石を、目地を詰めて床に貼りました。一枚がタタミの大きさです。予想外だったんですが、その大埋石が下から光乱反射して上手く作用したのです。ものすごく絵がきれいに見えるんです。ほんとうに建築を感じさせないんです。

それから、ここは履きものを脱いで上がる美術館です。そんな事情でこの大理石の下は床暖房していますから、座って絵を鑑賞することもできます。日本画は油絵と違って、絵の具が微粒子ですから、土ぼこりは大敵です。長期的にはそれが問題になるんですが、ここではそれがありません。主展示室以外のギャラリーには藤ゴザを敷いてあります。市も管埋がとても楽だといっています。そういった点でもこれは上手くいきました。

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