アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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私の建築手法
横河 健 - 建築とテリトリー
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東西アスファルト事業協同組合講演会

建築とテリトリー

横河 健KEN YOKOGAWA


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CESS埼玉県環境科学国際センター
メインのアプローチがある西側外観を見る
メインのアプローチがある西側外観を見る
北側ビオトープ(生態園)より見る
北側ビオトープ(生態園)より見る

1995年10月に行われた指名プロポーザルコンペティションの結果、勝ち残って、設計させていただいた建物です。コンペ連敗中だったこともあり、これで取れなかったらもうコンペはやめようと思っていたのですが、幸運にも設計者に選ばれました。

この建物の名称の一部にもなっている環境科学とは、都市が抱えている環境問題をより科学的な側面から考えていこうというもので、その環境科学を実践研究するための施設として計画されました。昔でいう公害研究所の延長といっていいかもしれません。ダイオキシンの問題をはじめとして、一般の環境に対する関心は高く、大気、水質、あるいは土壌のほか、廃棄物、科学物質、それによる農作物への影響など多岐に渡る分析処理の必要性が高まっています。この施設は、それらの分析を行うとともに、その情報を社会に開示することも目的としています。また専門家のみならず一般の人たちへの環境教育もプログラムに組み込まれています。

もうひとつこの施設の特徴といえるのは、海外の研究者を受け入れていることです。特に現在のアジア圏は、環境よりも経済発展が優先されることで環境の悪化が甚だしいと聞きます。そういった環境に問題のある、簡単にいえば公害のひどい国から研究者を受け入れるための宿泊施設も整備されています。国際貢献という意味合いからも重要な施設だといえるのではないでしょうか。

南西側から見ると、手前左に展示棟、右に宿泊棟、奥に環境科学研究およぴ実験のための研究棟が設けられています。宿泊棟と研究棟を結ぶ位置に設けられているのが事務棟で、建物北側の外部空間には、ビオトープ(生態園)が設けられています。

2階平面
2階平面
1階平面
1階平面
研究棟 構造・設備システム図
研究棟 構造・設備システム図

環境問題はある一部の特定の人が取り組んで解決すべき事柄ではなく、世界中の、かつあらゆる世代が取り組むべき問題です。そのためにも専門家による調査・研究のためだけではなく、一般の人たち、特に子どもに対する環境教育は重要です。ただ、単なるジオラマのような展示解説だけでは面白くありません。そういった施設はどこででもできます。ここでしかできない環境教育とは何かと考えたとさ、幸いにもここは本物の研究実験施設が隣接しているのですから、専門家が実際に何をしているのか、その現場を子どもたちにも見せてしまおうと考えました。

ここを訪れた子どもたちは、まず専用のエントランスから展示室に入ります。ここは環境に関するさまざまな問題を展示し学習してもらうために設けたものです。まず、この展示室を見てもらって、見終わったら二階に上がります。二階に上がりますと、いったん外に出て、空中廊下のようなところを歩いてもらいます。なぜ外部に張り出した廊下に出てもらうかといいますと、一般の人に施設を利用している人の姿をなるべく見せたかったからです。人の動きが見えると、何をやっているんだろう、と興味をもってくれます。そういった周囲からの反応がないと地域に根差した施設にはなっていさません。

空中廊下を通って次に入るのが、メディアコリドーです。ここは研究成果の情報開示のための図書館で、コンピュータから情報や必要な資料を引き出すこともできます。ここを抜けると研究棟に入ります。もちろん研究をしている実際の部屋には入れませんが、研究している人の姿を上からのぞくことができるようになっているわけで、このことがとても重要だと思っています。

メディアコリドーを抜けると、正面はレストスペースです。ここは半分が屋内、半分が屋外になっていて、屋外からはビオトープ全体を見渡すことができます。ここで一体みしてビオトープを上から眺めた後、レストスペースを出て少し戻り、サイエンスコートのところで一階に下り、研究棟を横切って外に出ると、そこがもうビオトープです。ここでは、実際の植物や昆虫などの、植生、生態などを観察することができます。また、このビオトープの中には、観察やセミナーのための施設、エコロッジも設けられています。

研究棟 断面計画
研究棟 断面計画

研究棟は、細長い中庭をサンドイッチするような構成になっています。この中庭はサイエンスコートと呼ばれる研究者のためのプライベートコートです。研究者というのは研究に没頭しがちで、自分の領域以外の人とはあまり交流しないようです。そのため閉鎖された世界がつくられてしまっている。だた、それは研究者一般にそういった性行があるわけではなく、日本の施設環境にも相当に問題があったのだろうと思います。この施設では、お互いが気軽に交流できるような場所をつくりたいと思い、提案しました。戸外の空気を吸いながら、コーヒーでも飲んで、議論に興じるというのもいいのではないでしょうか。

研究棟にはさまざまな薬品やガス、分析機器などが頻繁に搬入搬出されることから、研究棟の南西側にはサービストラックと呼ぶ通路を設けました。直接研究所の中に車が入り込めるような仕組みです。さらに研究棟内部の研究室にはメゾネット形式を多く採用しました。上階でデスクワークをして、下階で実験を行うといったように、空間を上と下で使い分けできるようにしたのです。

構造は今川憲英さんにお願いしました。構造における最大の特徴は二階の梁にフィーレンディール梁を用いたことです。この梁の高さ、つまり梁成は約ニメートルくらいありますので、この高さニメートルの格子梁の空間の中にいろいろな設備配管を納めています。研究室や実験室ですから、さまざまな機械を使いますし、エネルギーの使用量も多い。また、そのための排気、廃熱、汚水なども処理しなくてはなりません。このように、この施設は、一般の建築に比べ設備に対する容積的な比重が大きいのです。また、実験や研究内容によって、その設備も変えなければなりません。そういった問題にフレキシブルに対応するための手段として、フィーレンディール梁はとても有効だったと思っています。

展示棟一階エントランスロビー
展示棟一階エントランスロビー
1階平面
コンペ時に作成された模型

外観のエレベーションとしては、外側にガラスのルーバーとアルミのルーバーをたて格子状につけました。日照と風を調整する役割を担っています。手動で動かすことのできる部分もあり、気候条件によって、あるいは季節に応じて使い分けができるようになっています。

アルミのルーバーは押し出し型材を二枚合わせたものです。この研究所のために型を起こしました。角度の調節は比較的簡単なプリミティブなやりかたでできるようになっています。レバーを持ち上げ、ピンを差し込む穴の位置を変えるだけで、全体の角度が変わります。

環境がテーマの建物ですから、なるべくエコロジカルな設備を使おうと、太陽光発電もあれば太陽光温水装置も設置してあります。ただ、通常と若干違う点は、屋上ではなく壁面に取り付けてしまったということでしょう。施設が施設ですから、どうせ使うならと、エレベーションの意匠に使ってしまいました。

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