アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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妹島和世+西澤立衛 - 近作について
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2004 東西アスファルト事業協同組合講演会

近作について

妹島和世+西澤立衛K.SEJIMA + R.NISHIZAWA


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デザインスクール
周辺地区、手前の白いボックスがデザインスクール
周辺地区、手前の白いボックスが
デザインスクール

西澤妹島と共同でやっているものに話を戻しますが、スペインのバレンシアという都市に建つ、バレンシア近現代美術館の拡張計画です。

妹島バレンシアの旧市街地は歩いても2〜30分で端から端までいけるサイズの小さな都市です。この美術館は旧市街地の端に建っており、その向こうは新市街地です。

西澤ドイツにエッセンという都市があります。その郊外に炭坑地区があります。今は使っていないのですが炭坑とその関連施設が産業遺跡として保存されています。これがツォルフェライン炭坑産業遺跡群としてユネスコの世界遺産に指定されていまして、ヨーロッパほか世界各地から結構多くの人たちが集まってきます。これは、そのエリアの片隅にデザイン学校をつくるというプロジェクトです。コンペに参加して勝って、今、実施設計をやっているところです。

妹島この炭坑産業遺跡群は三つのブロックにわかれているのですが、人間のためのエリアではありませんので、スケールがいわゆる都市とは異なるのです。石炭を運ぶためのレールや特徴的な用途の建物など、すべてが巨大スケールで、異様なボリュームがいくつも建っているのです。私たちの計画する地域は四つめのブロックになると思えたので、周辺の特殊なスケールの風景に連続するように、キューピックなものをつくることを提案しました。また、遺跡群よりも市の中心部に近い側に計画地があるので、市内からアプローチしてくるとこの建物がいちばん最初に見えてきます。そのため、このエリア全体に対してのゲートというかランドマークのようなものとしても機能したらいいだろうと思い、計画を始めました。

おおよそ35メートル角くらいの建物で、高さは内部の機能ではなく、まわりの状況から決めました。一階には、市内側からきたときのエントランスと炭坑遺跡群側からきたエントランス、展示室とカフェとオーディトリアムがあります。基本的には一般に開放されています。二階は主にスタジオで、そのほかに休憩やコンピュータ、プレゼンテーションのためのコーナーがあります。デザインスクールといっても企業とタイアップしているので、ちょっと年齢の高い人たちが研究、リサーチするような学校が想定されています。三階はセミナー室と図書館です。四階は事務室で、屋上は一般に解放されて、炭坑遺跡群全体を眺めることができる場所としてつくっています。

外観
外観

西澤全体はコンクリート造で、外壁が構造体、中には三つの小さいコンクリートのコアがあります。純粋なコンクリート造ですね。ここでやろうとしていることのひとつは、大きな穴をコンクリート壁にいっぱい開けていくことで、部分的に透明になったり、部分的にコンクリートらしく不透明になったりすることです。もうひとつは、薄い外装というものです。ドイツは寒い国なのでコンクリート打放しをやろうとすると、まずコンクリートの躯体をつくってその外に大変厚い断熱材をつけて、さらに外にもう一回コンクリートを打つのです。つまり構造と化粧としての打放し面の二重壁になるわけですね。そういうダブルシェル、ダブルレイヤー構造が一般的な方法で、外壁が大変厚くなります。ドイツの建物はそのようにして重厚な壁をもつ建物になるわけですが、この計画で僕らはマテアス・シューラーという環境エンジニア、室内外の環境をデザインする人なのですが、この人といっしょに計画をしました。彼とやったことは、地熱を利用するということです。場所が炭坑ということで地熱があるわけですが、それによってコンクリートの温度を年間をとおしてほとんど一定の状態にするというものです。つまりいつ触っても温度が変わらないという状態ですね。それを建物に与えていきました。たいした熱量ではなく微々たるものですが、それにより躯体を一定温度に保とうとしています。アクティブインシュレーションといういい方を彼はしていますが、常に熟を与えて環境をコントロ−ルするため、ダブルシェルではなくシングルの薄いコンクリートにし、かつ内部も外部も打放しにしています。

妹島あくまで暖冷房ではなく、断熱材のかわりにその土地にあるお湯をそのままコンクリートの中にパイプで通して気温を一定にしたのです。ですから暖房の際には床に温水を、冷房の際は冷水を通すというやり方です。

西澤駆体を一定の温度にするということの重要なもうひとつのメリットは、駆体が温度差をもたないことによって構造体の寿命が飛躍的に延びるということです。ここは冬に氷点下になる一方で夏はとても暑くなります。その大きな温度差をなるべく縮めようとする計画でもあります。

妹島開口部の位置とその透明度に関しては、ずいぶん検討を重ねました。なるべく一階は外から人を引き込めるような場所にしたいとか、炭坑遺跡群を中から見せたいとか、内部は機能によって、例えばコンピュータの場所は少し暗いはうがいいとかいう理由で開口部のありようを決めています。

二階のスタジオは天井高が9メートル近くあるのですが、いちばんアクティブに使われる場所で、中からはまわりの景色を楽しめるよう、外からは内部の活動が見えるようにと計画しています。天井もコンクリート打放しなのですが、明るい空間というのをつくろうとしています。また、屋上にもコンクリートの屋根が覆い被さっていて、切り取られた風景を楽しめる場所になっています。

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