アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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私の建築手法
坂 茂 - 作品づくりと社会貢献の両立をめざして
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2012 東西アスファルト事業協同組合講演会

作品づくりと社会貢献の両立をめざして

坂 茂SHIGERU BAN


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ノマディック美術館

「家具の家」のシステムは、収納ユニットを構造体として、ユニットとユニットの聞を空間として構成したものですが、この考え方を延長して、「ノマディック美術館(2005年)」という移動式の美術館を設計しました。依頼主はカナダ人のグレゴリ・コルベールという写真家で、「世界中を移動できるような、自分の個展をするための美術館をつくってほしい」と言われました。建物全体で3,000平方メートルほどになる計画で、建築を移動できるようにするためには、つくるのも解体するのも簡単でなければなりませんし、ある程度経済的に輸送できなければなりません。どうしようかと考えて、貨物輸送用のコンテナに着目しました。コンテナには国際基準がありますので、世界のどこの国に行っても同じサイズのコンテナを借りられます。世界標準の長さ20フィート(6メートル)コンテナを構造体として使うことによって、「移動しなくてもよい移動美術館」を考えました。コンテナは展覧会を開催する街の近郊で借りてきて、会期終了後はまた返せばよいのです。他の国に巡回する際には、もちろん屋根材などは移動しなければなりませんが、建物の大部分を構成するコンテナは輸送する必要はありません。

最初の展覧会はニューヨークで開催しました。敷地はニューヨークの14丁目にある、長さ200メートルほどの木造の桟橋でした。歴史ある古い橋なのですが、老朽化しているためにできるだけ建物の荷重を軽くしなければならず、コンテナを千鳥状に積むことで数を減らしました。コンテナは角にコネクションが付いているので、角と角をオーバーラップさせて、既存のコネクターを使って連結し、構造として自立させています。屋根は、直径75センチ、厚さ15ミリ、長さが10メートルの紙管を並べて支え、その紙管の間に作品が展示されるという構成です。

コンテナの結合機柄
コンテナの結合機柄。
「ノマディック美術館」(ニューヨーク)遠景
「ノマディック美術館」(ニューヨーク)遠景。

「ノマディック美術館」(ロサンゼルス)シアタースペース
「ノマディック美術館」(ロサンゼルス)シアタースペース。

翌年の移動先となったロサンゼルスのサンタモニカでは、敷地が海岸の近くの駐車場で、長さ200メートルのギャラリーを入れられるだけの大きさがありませんでした。またアーティストから映画を投影できる場所を増設してほしいと言われていたので、200メートルのギャラリーをふたつに分けて少し隙間を開けて併置し、その間に屋根を架けてシアタースペースを追加しました。

このかたちのまま、2007年には東京のお台場に移動しました。開催するその場ごとにコンテナを借りるので、毎回色が違ったり配置が違ったりしています。


「ノマディック美術館」(お台場)外観
「ノマディック美術館」(お台場)外観。
「ノマディック美術館」(お台場)内観
「ノマディック美術館」(お台場)内観。長さ10mの紙管が屋根を支える。

「ノマディック美術館」アイソメトリック
「ノマディック美術館」アイソメトリック
「ノマディック美術館」(お台場)遠景
「ノマディック美術館」(お台場)遠景。

「ノマディック美術館」(お台場)シネマCを見る
「ノマディック美術館」(お台場)シネマCを見る。
「ノマディック美術館」(お台場)会場風景
「ノマディック美術館」(お台場)会場風景。

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