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東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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原 広司 - 「集落の教え」と様相論
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東西アスファルト事業協同組合講演会

「集落の教え」と様相論

原 広司HIROSHI HARA


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離散型の集落から幻の集落まで
メキシコ・インディオの集落
メキシコ・インディオの集落

次は、中南米の集落の例です。私はそれを離散型の集落と名前をつけたのですが、お互いにオーイと呼び合うと聞こえる距離に、少し離れて住居が存在している例です。住居と住居の間に広がっている空地状のところは、大抵が休耕地です。肥沃な土地が少ないため、続けて同じ土地で畑作ができない。ときどき休ませなくてはならないという痩せ地が多いんです。ですから、この型の集落はいままで見てきたものと違って、非常に不思議な光景をつくり出しています。ただ不思議なだけではなく、離れて建っているということは、それぞれ一軒一軒が自立していながら全体としては連帯しているという図式でもあるわけです。この離れて建つというのは人間の生き方にも通じているような感じもします。それぞれに離れて生活していて、あまりべ夕ベタした関係ではない生き方です。

これは、グァテマラとの国境に近いメキシコのインディオの集落です。離散型ではあるが、さらに孤立感がもっとはっきりしている例です。住居のまわりとさらに外側に二重の木柵があって、家畜の囲いになっているという、非常に美しい集落です。ここでは、アフリカやイランでの土という材料と同じ意味で、木を材料に使って、その場所なりのアイデンティティを生み出している集落です。それぞれにアイデンティティのある様相を生み出している集落ともいえます。こうした様相は、機能論的な説明もしようと思えばできますが、そうではなしに、離散型集落の持つ一種独特のたたずまいなり、集落の風景といったそのものが、離散型集落の様相であると、とらえるべきでしょう。

メヒカリチタン(メキシコ)
メヒカリチタン(メキシコ)

次は、大変に有名な集落です。遠くから見ると大した集落ではないんです。真上から見ることができれば非常にきれいな形になっています。これがなぜ世界的に有名かというと、乾期には道であったところが、雨期になると水位が高くなって、道路はすべて水路になってしまうのです。人びとはそこをカヌーで交通するようになる。すなわち水と陸地の境が変わって、雨期には水の中の集落になるのです。境界が移動することによる、四季を通じての集落の状態の移り変わりが、この集落の特性になっているわけです。これもまた、機能論的な説明だけでは説明のつかない例です。このメヒカリチタンというメキシコにある集落は、境界をめぐって変化するという。独特の様相を持っているわけです。

次は、また大変有名な浮島の集落で、地上四千メートルのチチカカ湖にあります。この浮鳥は名前の通り浮いています。だから浮いて動いているわけです。その浮島の上に集落があるのです。

チチカカ湖の浮島集落
チチカカ湖の浮島集落
チグリス・ユーフラテス川下流の集落
チグリス・ユーフラテス川下流の集落

メヒカリチタンとチチカカ湖のふたつは、世界でも待異な例ですが、もうひとつ、全く別の場所にある、これもまた島の上の集落の例です。

イラクのチグリス・ユーフラテス川下流の集落です。チグリス・ユーフラテスといえば人類文化の発祥の地のひとつです。その二本の川が一本になって海に注ぐ下流のほうになると、周囲に水があふれて沼沢地帯をつくります。その地帯で人びとはどうして生活しているかというと、自分たちで人工の島をつくります。葦と家畜の糞などに泥をまぜてかためた島です。そして、ここではひとつの家族はひとつの島に住んでいます。家族島のわけです。あっちにひとつ、こっちにも一家族といったように延々と続いて浮いているわけです。距離にするとだいたい100メートルぐらいの中に点在しています。さきほどの中南米の離散型の集落の各住居間の距離より、もう少し離れて各家族島があって、人間の生き方、つき含い

住居も、ここでの独特の建て方があります。しかし島も住居も永持ちはしません。住居は二年か三年でつくりなおすようです。よほどしっかりつくったものは七年くらい保つそうです。住居はどの家もだいたいよく似た形をしています。ところが、ここで驚くべきことは、カヌーがどの家のも全く同じ形をしていることです。住居よりカヌーがそっくりです。私たちが調査した集落の中で、これは最も古くからあって、一番長く続いた集落形態の例でもあって、約五千年続いています。このことは壁画が残っているために、そのように確認されています。

彼らはなにを採ったりして生きているかというと、まず葦があります。そしてそこに飛んでくるさまざまな鳥、この沼地に住む魚、それが彼らの生産のすべてです。その葦と鳥と魚を採るための最もいい形式というのが、この集落配置であり、住居形態であるといえるわけです。その他、生活していく上でのいろいろな自然循環系も含めて、もっと細かくいろいろ説明できますが、簡単にいえばそういうことです。

チグリス・ユーフラテスの家族島の住居のつくり方

チグリス・ユーフラテスの家族島の住居のつくり方のひとつで、水がないところでは塗り壁で仕上げています。そして後ろには家畜の小屋もついていて、箒のような形をしています。これもまた大変きれいな集落になっています。沼地の島の住居と共通する形もありますが、規模が40メートル近い大きなものになるので、島ではできない要素も持っています。類似と差異がここでも見られます。

チチカカ湖の集落にしても、チグリス・ユーフラテス川の集落にしても、こうした例を見て感じることは、まるでフィクションであるということです。本当には信じられないような住み方であるし、非常にロマンチックです。これを見ると、人間というのはどういうところでも住めるんだと考えるようになってきます。地中に住んでいる人たちもいれば、樹上に住んでいる人たちもいるわけです。そう考えてくると、人間の住み方の幅の広さというのを感じるわけです。そして、そこにはすばらしい考案が、たとえば五千年といったような時間に支えられているといえます。

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