アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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妹島和世+西澤立衛 - 近作について
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2004 東西アスファルト事業協同組合講演会

近作について

妹島和世+西澤立衛K.SEJIMA + R.NISHIZAWA


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ディオール表参道
ディオール表参道、全景
ディオール表参道、全景

妹島去年の12月に竣工したクリスチャン・ディオールの日本のメインのショップです。表参道にありますので、ご覧になった方も多いと思います。

私たちができることは、ストラクチャー、構造ですね、それとベーシックな設備のシステムと外観がどうなるかということでした。インテリアについてはディオールがインハウスでやるということでしたので、本来は外観とインテリアがきっちりわかれるような提案の方がそれぞれスムーズにデザインできたと思います。しかし、私たちは何とか外装デザインと内装デザインがわかれた状態ではないもの、内部と外部がそれぞれ影響を与え合うようなものをつくれないかと思い、四面ともガラスで、内部が見えてしまうようなものをつくりました。

西澤全体としては、基本的にはワンフロア一室でそれが垂直に積層されていって、ふたつの小さなコアで全体を支える構成になっています。それぞれの階でインテリア空間に差をつけるために天井高を変えています。高さ30メートルまで建てることを求められましたが、要求された四フロアで30メートルをつくると天井高が高くなりすぎます。そこで一見居室のように見える階高の高い設備スペースを天井裏に設け、それと店舗スペースを反復して積んでいくというような構成を取りました。それによって階高がランダムに反復していく断面構成になったのです。断面図を見ていただくと、厚いスラブと薄いスラブが見えると思うのですが、厚いのが床で薄いのが天井です。外から見ると四階建てにも、またそれ以上にも見えます。

外壁は完全なガラス張りではなくてガラスとアクリルによる二重レイヤー、二重構成になっています。これは先はど妹島が触れましたが、中と外が完全に断絶された密室空間ではなくて、都市に、つまり中から外に何となく連続していくような開放性の高い建築物をつくりたいというふうに考えたひとつの結果です。ダブルレイヤーにしたもうひとつの理由は、クリスチャン・ディオール側から、ディオールがもっているイメージを建築的に実現できないかという要求があったためです。

アクリルスクリーン製作のための石膏
アクリルスクリーン製作のための石膏
型の上に軟らかくなったアクリルを載せる
型の上に軟らかくなったアクリルを載せる

妹島ディオールらしさとは何かというのは難しい問いですが、クラシカルでありながらも現代的であり、エレガントでフェミニンな感じであるということでした。私たちは、中と外がオーバーラップしながら、ドレープ状のアクリルスクリーンが柔らかく全体を包み込むようなイメージ考えました。

アクリルスクリーンはひとつひとつ扉になっていて、すべて開閉ができるようになっています。これはガラスのメンテナンスとアクリルのクリーニングを目的としていますが、インテリアによって開けていいところは開ければもっと中が見えてきて、中と外がもっと混じっていくのではないかと考えていました。

多目的ホール
多目的ホール

西澤これはアクリルスクリーンの制作中の写真です。まず石膏で山のようなかたちの型をつくり、それを平たい木製のボックスに島状に並べます。その上に熟して軟らかくなったアクリルを載せ、全体を密封して空気を抜いていきます。そうすると山の部分はそのままでとどまって、隙間の部分はどんどんへこんでいき、三次元曲面ができあがります。このアクリルは透明ではなく、白いストライプが印刷されています。これは透明ではなく半透明性にしたかったということと、照明を当てたときに完全に透明だとその表面が光を反射しないためです。

クリスチャン・ディオールのことを勉強する中で、女性のスカートのドレープは非常にディオールらしさを表しているということを知りました。それで柔らかい女性的なイメージを、ガラスよりも柔らかい材料によってつくれないかと思ったのです。

基準階平面
基準階平面
配置
配置

妹島光をあてるとガラスにまず反射するのですが、その内側で、アクリルがさらに反射をするので、それが混ざり合うことをめざしました。

西澤単にユラユラ揺れるような感じを出すのではなく、スカートのヒダの動きがイメージできるようにしました。

妹島最上階の多目的ホールから外を見ると、アクリルのドレープ越しに東京の景色が少し歪んだ状態で見えます。

基準階平面
基準階平面

西澤普通に密室をつくってしまいますと、中に入ったときにまわりがわかりません。しかし、ここは東京の風景がよく見えるところで、しかも表参道の素晴らしい並木道があるということもあって、外の雰囲気を感じられるようにしたいと考えました。表参道に建つディオールの建物という意味をかたちにしようとしたわけです。

照明計画については、ファサード自体が陰にならないでずっと白い状態を維持することをめざしました。普通のビルは室内が明るくなってその明かりが外から見えるわけですが、ファサードの表面にあるいろいろなものはシルエットとして表れるわけですね。つまりファサード自体は暗くその奥の中が明るいという状態でビルは輝くわけですけど、ここではそうではなく、表面すべてが明るいものになるよう試みたのです。

妹島つまり中の明るさと外の明るさを両立させようと、ここでは外側から光を当てています。そのため、中の光ももれる、そして外から当たる光も反射するようアクリルに白い細いラインを入れ、内外両方が光っている状態を実現しょうとしました。

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