アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

マークアップリンク
トップ
私の建築手法
隈 研吾 - 小さな建築
Casa Umbrella
2022
2021
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

2012 東西アスファルト事業協同組合講演会

小さな建築

隈 研吾KENGO KUMA


«前のページへ最初のページへ次のページへ»
Casa Umbrella

「Casa Umbrella(2008年)」は、ミラノのトリエンナーレで開かれた、「Casa de Tutto(みんなの家)」というテーマの展覧会に出展した作品です。2008年というと、その少し前にハリケーンや東南アジアの津波などの大災害が多数起きたことがきっかけになって、被災者住宅を考えてほしいということで招待されたプロジェクトです。テーマが「Casa de Tutto」でカーサ(Casa)だから、傘でつくろうと考えました。傘を組み合わせて、バックミンスター・フラー(1895〜1983年)のフラー・ドーム(ジオデシック・ドーム)の先を目指したドームをつくりました。フラー・ドームよりもずっと軽い構造で、特別な傘を持った五人の学生が集まると、傘を繋ぎ合わせてドームをつくることができるのです。被災者住宅として、これが画期的だと思ったのです。家の玄関に常時この傘をおいておき、いざという時には、玄関にあるので忘れにくい(笑)。この傘を持って逃げて、同じ傘を持って歩いている人を見つけると、そこで一緒に家をつくることができる。

「Casa Umbrella」外観
「Casa Umbrella」外観。傘が15個集まってひとつのドームとなる。
「Casa Umbrella」内観
「Casa Umbrella」内観。

フラーはフラー・ドームをすべてフレームで解いていますが、この「Casa Umbrella」では、フレームと膜を両方構造として使っています。つまり、膜をテンション材、フレームをコンプレッション材として使っているのです。傘の骨のような細いフレームでは、普通はこれくらいの大きさのドームの構造になりません。しかし、それが可能となっているのは、フレームに張っている膜を構造として使っているからなのです。情造は江尻憲泰さんにお願いしました。傘同士はジッパーで繋げていて、傘の柄もすべて取り外せるようになっています。

私たちのつくった「Casa Umbrella」 は、小さいものを組み合わせてつくれる、という意味で、「Casa de Tutto(みんなの家)」ですが、これは一種の建築のデモクラシーだとも言えます。自分たちの手でつくれる、素人でもつくれる、日常の小物の組み合わせでつくれる、ということがとても重要だと思っています。

«前のページへ最初のページへ次のページへ»