アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

マークアップリンク
トップ
私の建築手法
槇 文彦 - 近作を語る
セントルイス・ワシントン大学 サム・フォックス視覚芸術学部 [2]
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

2008 東西アスファルト事業協同組合講演会

近作を語る - 建築のグローバリゼーションの中で考えること

槇 文彦FUMIHIKO MAKI


«前のページへ最初のページへ次のページへ»
セントルイス・ワシントン大学 サム・フォックス視覚芸術学部 [2]
「ケンパー・アートミュージアム」外観
「ケンパー・アートミュージアム」外観

「ケンパー・アートミュージアム」の彫刻テラス周辺の内部の床は、コンクリートの洗い出しです。アメリカの労働者は体が大きいので、このように大きな壁をしごいたり、床の洗い出しをしてつくるところはいいんです。しかしサッシュ回りの緻密なディテールなどは、やはりユニオン同士の関係などもあり、なかなか苦労するわけです。

彫刻テラスに隣接するホワイエの内観
彫刻テラスに隣接するホワイエの内観

なぜ建物をつくるにあたりモックアップが大事かと言うと、彼らはどういう順序で異なる職種と共同作業をしたらよいかということを、モックアップを通じて初めて学ぶことが多いからです。たとえば「ケンパー・アートミュージアム」の内部にはアトリウムがありますが、ここの階段は無垢のライムストーン、手すりはステンレススチールでできています。これは日本だとなんでもないディテールなんですが、アメリカではこういう部分もちゃんとモックアップをつくって練習してから、実際につくらせるという手間をかけました。具体的にどうするかというと、私の事務所の担当が現地に行って、モックアップの作成をすべて指示します。しかも一回では合格させず、何回もつくり直させます。こうすることで彼ら自身も納得がいき、また技術を習得していく、という状況の中で建物をつくっていきます。

ライムストーンを用いた外壁
ライムストーンを用いた外壁
ライムストーンとベース
ライムストーンとベース
アトリウム
アトリウム
手すりのモックアップ
手すりのモックアップ

壁面詳細
壁面詳細

誰かがそこまでやってくれ、と言っているわけではありません。しかしわれわれは、せっかくなら海外でも日本で考えているのと同じ、さまざまな職種が一緒に協働するような、かなり高度なものを考えてやろうとしています。日本の伝統の中で生き続けてきた以上、建築家というのはプロとして、どこの国、どの場所のどういうものであっても、きちんとつくるということをやるべきではないかと考えています。そうした理由から、全体模型の他にさまざまな重要な箇所の部分模型を、海外でもできるだけつくるようにしたいと考えています。結果的にはこうしたモックアップ、それから単位の小さなライムストーンを利用して、精度の高い建物をつくることができました。

「ケンパー・ミュージアム」の半分は美術館になっています。一階に企画展示室、二階には常設展示室も入り、さまざまなかたちで自然光が入ってきます。向こうの大学は寄付が多くコレクションが充実しているので、大学美術館というのが成立します。中でも今回できたものは、アメリカの大学美術館の中で今最も充実しているもののひとつではないかと思います。

常設展示室
常設展示室
セントラルプラザで活動する学生
セントラルプラザで活動する学生

また既存の建築群の向かいにふたつ建物をつくったことでできたセントラルプラザがありますが、そこは現在非常にアクティブに使われているということです。建物ができてわれわれがオープニング・セレモニーのために訪れた時、既に学生たちがこの広場で音楽を演奏したり、読書をしたりしていました。これはその時の写真ですが、この様子を見て非常に面白いと思ったのは、ひとりの女子学生が「誰もいなければ堂々と、階段の真ん中で寝そべって本を読んでもいいじゃないか」という風であることです。日本であれば、おそらく遠慮して階段の端の方に腰かけているでしょう。先ほどアメリカや地域の文化と言いましたが、アメリカ人は自分の身体と、周辺の環境の関係を非常に重視します。満員電車の中で長く揺られることに慣れているわれわれ日本人と違い、身体環境に対して非常に鋭敏で、高い所がよい、広い所がよい、広ければ真ん中にいる、という習性がこの一枚の写真の中に出てきているわけです。

«前のページへ最初のページへ次のページへ»