アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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槇 文彦 - 近作を語る
シンガポール理工系専門学校キャンパス [3]
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2008 東西アスファルト事業協同組合講演会

近作を語る - 建築のグローバリゼーションの中で考えること

槇 文彦FUMIHIKO MAKI


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シンガポール理工系専門学校キャンパス [3]
重層する「アゴラ」の空間構成。ライブラリーからコート、その奥に「アゴラ」を見る
重層する「アゴラ」の空間構成。ライブラリーからコート、その奥に「アゴラ」を見る

ここでぜひお見せしたかったのは、この「アゴラ」では、誰かと集うことができるのはもちろん、ひとりで勉強をしたり膜想にふけることもできるということです。先ほど「三原市芸術文化センター」でも言いましたが、都市というのは基本的に群れるための場所だと言えるでしょう。しかしそれだけではなくて、ひとりで楽しむこともできるという、その両方が必要であると思います。「パブリック・スペースは人がいる所、プライベート・スペースはひとりでいる所」と区分するのではなくて、ひとりでいても気持ちのよい、あるいは充実していると感じることができる、そうしたパブリック・スペースというのが、実は都市を豊かにしているのです。そういった意味で、「シンガポール理工系専門学校キャンパス」は一種のミニ・シティです。別に私がこういう風にしてくれといったわけではなくて、実際に行くとこのようにさまざまな情景が見られるということは、われわれ建築家にとって非常に満足感を得られるわけです。

イランの古都、イスファハンのブルーバード「チャド・パック」
イランの古都、イスファハンのブルーバード「チャド・パック」

このあいだサハラ砂漠にいるライオンの生態についての番組を見ていたんですが、雄ライオンというのは、王者になって群れの中の長になるか、一頭になって別の新しい群れを探していくか、という環境に生きているわけです。つまり雄のライオンは、広い砂漠の中で生死をかけたかたちで、「ひとり」と「群れ」という生活をしている、ということです。

これは私が世界で一番素晴らしいと思っているブルーバード(並木道)の写真です。イランのイスファハンという、日本いう京都のような所があり、そこのコメイニ広場の近くにある「チャド・パック」という長さ約2キロメートル、幅約100メートルにわたるブルーバードです。100メートルというと名古屋のそれと、ほぽ同じ長さです。

道の両側に家、歩道、車道がある、というところまでは普通の道なんですが、ひとつだけ違うのは、ここには真ん中にペデストリアンのためだけのブルーバードがあって、夕方になると、仕事を終えた人や散歩に来た人が三々五々やってきて、ゆっくりと歩いていきます。このパブリック・スペースは、商業的なモールなどとは違い、ひとりの人間が孤独を楽しめるようにしつらえられているのです。もちろん複数の人がいてもかまわないんですが、ここでは同時にひとりでものを考えたり、そうして歩きながら時聞を楽しむこともできるわけです。周りに車は通っていますが、しかし本当に静かで木に囲まれている場所なのです。これがまさにひとりのためのパブリック・スペースですが、世界にはそういう場所がほとんどありません。

繰り返しになりますが、確かに都市にとっては賑やかさが大事です。しかし同時に、ひとりで自分の存在を確保できるパブリック・スペースも、もっとあってよいのではないかということです。京都が素晴らしい場所ということは昔から言われていますが、それは京都には学者や芸術家が通る「哲学の道」をはじめとして、そういう散歩を楽しめるパブリック・スペースがたくさんあるからです。特に宗教に関係した場所にはそういうスペースが多いかと思いますが、こうしたことも重要であるわけです。

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