アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
大西私たちは「愛される建築」とは何だろうということを常に考えながら設計しているのですが、それを言葉で表すとこの6つで言えるかなと思っています。
分節的というよりは、一体的
組み立てるというよりは、生まれ育っていく
美しいというよりは、愛おしい
アノニマス*というよりは、個性がある
人工物というよりは、生き物のような
「ある」というよりは、「いる」
「分節的というよりは、一体的」とは、建築のあり方自体が分節的ではなく一体的であるということも含まれていますが、例えば建築をつくる時にプログラムはプログラムの問題である、形は形の問題であるというふうに分節化しないで、プロセスを育てていくことと建築をつくること、さらにその後使っていくことを一体的に捉えるということでもありますし、人間の役割を考える時も、私は設計者であなたは施工者で、あなたは地域の人、というように縦割りで考えるのではなく、その人が持っているすべての能力を一体的に総動員してつくっていく姿勢のことを指しています。「組み立てるというよりは、生まれ育っていく」とは、「人工物というよりは、生き物のような」とも繋がっているんですが、建築を命を持たない部材同士を機能的に集めたものと捉えるのではなく、それ自体に生命が宿って生き生きとしていると感じられる状態をつくっていくことであり、そのように建築を生き物と捉えてみると、子どもを育てていくように建築を育てていくような視点が生まれるんじゃないかと思っています。また、「アノニマスというよりは、個性がある」とは、例えばみんなと一緒につくることをテーマにすると、ともすると建築のデザインがアノニマスなものに向かいがちと思われるかもしれませんが、私たちはそうではなく、むしろ愛される建築を目指すという営み自体が建築をより個性的なもの、よりかけがえのない唯一の存在に向かわせていくと捉えています。それらを全体的に「あるというよりは、いる」という言葉で表しています。建築を見た時に、ただそこに建築がものとしてあるのではなく、まるで自分の意思でそこにいると思えるような建築を目指して設計をしています。
*作者不明の'匿名の'という意味。
講演する大西麻貴氏(左)と百田有希氏(右)