アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
大西「toberu2(2021年)」は京都府京都市につくった社会的起業家を応援するインキュベーション施設です。私たちはふたりとも大学時代を京都で過ごし、京都という街に対してはすごく大きな思い入れがあります。大学1回生の時に高橋康夫(1946~2023年)さんという都市史の先生が、道から京都の街の歴史を説明してくださいました。どのように通りを通し、路地や突き抜け、細かい道を通しながら街を住みこなしていったかということを知り、非常に面白いと思いました。京都にとって道は空間的なものであり、かつ人びとの活動の場でもあると思っていて、都市のあり方と建築のあり方は分かちがたく一体なのです。京都は通り庭、路地、大路、小路、街道そして遠くの街といったように、道というものに着目すると、建築から都市までが非常に連続的に捉えられるという面白さがあると思います。通り庭は、まさに家の中に道が入り込んできたというような空間で、これが中と外の体験を連続的にし、スケールを横断して繋げていくと感じています。「toberu2」は敷地前面に志賀街道という街道筋が通り、そこから奥に向かって通り庭が続いているような建築になります。「toberu1(2019年)」と合わせてふたつの建築を設計させていただきました。「toberu1」が3方通りに囲われているのに対して、本日ご紹介する「toberu2」は間口がすごく狭くて、奥行きが長い非常に京都的な敷地で、さらにクランクして奥が少し広くなっているのが特徴的でした。そこで、通り庭や奥庭があって、それに対して店や広間の空間が連なり、自然通風や自然採光の工夫が感じられる町家を参照して設計を進めていきました。敷地を南北に貫くように通り庭を1本まっすぐ通してその両側に個室を設け、真ん中に奥庭としての役割を持つ自然光が入ってくる吹き抜けを設け、そこを風が抜けていく構成にしています。ここは滞在型インキュベーション施設といって、起業したい若者たちがやってきて4カ月間共同生活します。ホテルと違い、時間と場所を共有するので、通り庭に向かっていろんな形の出窓が付いていて、通り庭を介してお互いの気配が感じられます。室内は土壁の浅黄土の撫で切り仕上げという少し艶が出るような仕上げで、床はコンクリート、奥庭にもタイルを使ってその釉薬が光っていたり、梁のところは北山杉の磨き丸太を使うなど、全体的に柔らかく光を反射するような空間になっています。共用部にはいろんな居場所があり、そこで仕事やディスカッションができるような空間構成にしています。
「toberu1・2」配置
「toberu1」外観
「toberu2」外観
1階通り庭から見る
1階南側共用部から見通す
2階平面
1階平面
地下階平面
断面