アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
2003年にフランス東部のドイツとの国境のそばにあるメス市にレンゾ・ピアノとリチャード・ロジャース(1902~1979年)による「ポンピドー・センター(2010年)」の分館を計画する国際コンペがあり、運よく優勝しました。そこで、まずパリに自分の事務所をつくろうと考えました。というのも、海外の建築物を設計する時、地元の建築事務所がクライアントの意見を優先して提案したデザインとは違うものができてしまうことがよくあるらしく、「ポンピドー・センター・メス」は自分で設計した通りにつくりたいと思ったからです。ちょうどパリ事務所の設立を考えていたタイミングでポンピドー・センターの館長にお会いし「屋根かテラスを貸してくれたら自分たちで仮設の事務所をつくる」と伝えると、「関係者が訪れた時に事務所をギャラリーのように案内できるのは展示として面白い」と言ってもらい、6階のテラスを借りることができました。そこに紙管と木のジョイントでつくった長さ約34メートルの仮設事務所「紙の仮設スタジオ(2004年)」を日本の学生やヨーロッパの学生と共同で3カ月でつくりました。結局、完成までの6年間、まったく家賃を払わずに毎日素晴らしいパリの景色を楽しみました。ただ、ひとつ不便なことがありまして、事務所も展示物の一部だったので、来客は1階で入場料を払う必要がありました(笑)。
「紙の仮設スタジオ」内観
敷地はメス市の中心街から離れていますが、街と繋がる美術館にしたいと思いました。そこで幅15メートル、長さ90メートルのチューブ状のギャラリーを3本、これをギャラリーチューブと呼んでいますが、45度ずつ回転させて積むことを考えました。各ギャラリーチューブの両端には大きな窓があってピクチャーウィンドウになっています。いちばん上のチューブからはメス市のシンボルであるカテドラルが見えます。メス市はドイツの占領下にあった時の古典建築がたくさんあり、中央駅もそのひとつで、今や街の歴史的な遺産です。2番目のチューブは中央駅をピクチャーウィンドウ化しています。
屋根は木造で考えました。屋根を考える上でヒントになったのが竹を編んだ帽子で、編み方のパターンを研究しました。多くの竹細工に使われるパターンには六角形と三角形が共存しています。六角形自体には水平剛性はありませんが、三角形が所どころにあるおかげで全体的な整合性が取れます。また、交点が一点に集中するパターンは竹では編めないので、どのジョイントも二方向の材が集まるようになります。このパターンで上弦材と下弦材をつくり、間に木の束を立てて屋根全体を構成しました。普通、木と木を同じレベルで繋ごうとすると、必ずスチールの部品が必要になります。ただ、木以外のジョイントを使って成立させた構造は木造らしくはありません。この建築では木造でしかできない構造で三次元的な曲面をつくりたかったので、木をオーバーラップさせて束に長いボルトを通し、全部の材を緊結させました。1階は、ガラスシャッターを開くと外と中の空間が一体化します。中央には鉄骨のエレベーターと非常階段が入ったタワーがあり、そこから屋根が吊られています。
「ポンピドー・センター・メス」西側広場より見る
1階フォーラム
1階フォーラムよりヘキサゴナルタワーを見る
ギャラリー・チューブ3よりカテドラルを見る
6階平面
4階平面
2階平面
1階平面
断面
屋根詳細アクソノメトリック