アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

トップ
私の建築手法
坂 茂 - 作品づくりと社会貢献の両立を目指して
台南市美術館
2023
2022
2021
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

2023 東西アスファルト事業協同組合講演会

作品づくりと社会貢献の両立を目指して

坂 茂SHIGERU BAN


«前のページへ最初のページへ次のページへ»
台南市美術館

台湾の台南市につくった「台南市美術館(2019年)」です。たまたま台南市のシンボルフラワーである鳳凰木が五角形だったので、五角形の屋根をつくりました。街の中心にある美術館なので、美術館と同時に公園をつくりたいと考えました。ギャラリーを積み木のように積んでずらしながら、市民が自由に入れる屋上庭園や彫刻の庭をつくっています。どのフロアからも美術館の中に入れるようにしています。屋根はフラクタルルーフといって、分割しても常に同じプロポーションの図形で終わるジオメトリを採用しました。京都大学の酒井敏先生がこれを使った「フラクタル日よけ」を開発し公園の休憩場をつくっていたので、彼と協働して巨大なフラクタルルーフをつくろうと考えました。シミュレーションでは、台南は一年中日射が強く、建物をそのまま太陽光にさらしていると建物の表面温度が60度になる状況に対して、通常の屋根をつくると冷房効果が約10パーセント削減できる計算になりました。ところが、同時に屋根から出る放射熱の問題が生まれます。それに対して、フラクタルルーフであれば木陰の下にいるような環境になり、木陰で葉っぱが気流を起こして涼しいように、フラクタルも気流を起こして涼しい空間が下に生まれます。シミュレーションしてみると、15パーセントの冷房負荷削減効果があることが分かりました。建物中央に設けた吹き抜けのアトリウムはフラクタルルーフから光と影が落ちる空間になっています。

「台南市美術館」西側外観

「台南市美術館」西側外観

屋根は五角形のフラクタルルーフとなっている

屋根は五角形のフラクタルルーフとなっている


«前のページへ最初のページへ次のページへ»